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アイスワイン残酷物語

アイスワイン残酷物語

アイスワインほどの美味しい甘口ワインを日本で購入するのは困難です。一体、何が困難なのか・・・?
「売っているお店が無い」ということや「値段が高い」ということが主な理由になっています。世界のグルメ市場の日本ですら、アイスワインを見かけることが少ないという、原因になっているのは、自然現象によって作られるために大量生産が出来ない、ということが最大の原因です。安定的に大量生産が出来れば、製造コストを下げることができますから、販売価格も下がります。反面、大量生産が出来ない製品は希少価値が高まることになります。天候に左右されながら大量生産が出来ないアイスワイン収穫の現状をレポートします。


12月中旬。ケロウナ市のSt.Hubertusワイナリーを訪ねました。私の定期的な仕事の一つで、春先からアイスワイン収穫までの間、ブドウをチェックするのです。
左の写真は、白品種のピノブランの実の味を確かめている私です。さて、その年の気候によって味わいの違いが生じることは勿論のこと、場合によっては収穫できない年もあります。収穫はマイナス9度以下の天候が数日つづいたある日に行われます。その日がいつなのか?保証も確約もできません。
近年の収穫日を見ても、97年産(1月3日)、98年産(12月19日)、99年産(1月16日)、2000年産(12月11日)と、約1カ月の誤差が生じています。
2001年産の場合、春から夏の恵まれた天候の影響でブドウは非常に素晴らしい生育を見せていました。11月になってからカナダは例年以上に寒くなったため、収穫のタイミングは12月初旬だろうという予測で満ちていました。ところが、12月に入った途端、急に暖かくなり、カナダ全土が暖冬になる気配が広がったのです。12月19日の夜、「明朝寒さが厳しくなるかもしれないので、収穫が出来るかもしれない」という連絡をワイナリーから受けた私は安堵に包まれたのですが、結局、マイナス8度までしか下がらなかったため、収穫は行われませんでした・・・
その後も寒くならないままクリスマスを迎えようとしています。このままでは、収穫そのものが出来ないことになり、2001年産のアイスワインが造られない結果になるかもしれない?という不安がカナダのワイナリー関係者に広がっています。


上の写真は、2001年産アイスワインとなる白品種のピノブランです。当地カナダBC州オカナガン地方で造られるアイスワインは、通常リースリングとピノブランを用いるワイナリーが多く目に付きます。カナダのアイスワインというと、世界中の免税店で販売されているナイアガラ地方のアイスワインが有名ですが、カナダ東部のナイアガラ地区がビダルという品種をアイスワインに用いる特徴があり、カナダ西部のオカナガン地方は、リースリングとピノブランが多く用いられるという特徴があります。
広大なカナダにおいて、同じアイスワインを造るといっても、地域によって使われる品種に違いが生じますし、当然、出来映えや味わいにも不思議なニュアンスの違いが生まれます。
一口にアイスワインといっても、その奥の深さは神秘的であり、一度アイスワインの世界の魅力に取り付かれたら、何とも言えない心地よさと満足感を味わえます。ワインを殊更に難しく考えず、素直に感じる美味しさを実感しながら、自分なりのワイン感を広げたいとしたら、アイスワインが一番楽しくて簡単だと思います。


写真のブドウを御覧下さい。「あれ、何か違う?」と思った方は、かなりのアイスワイン通でいらっしゃいますね。このブドウは、ピノノワールという赤ワイン用の品種です。
アイスワインは通常、白ワインの品種で造られます。天然の究極の甘さになるアイスワインは、赤ワインからは出来ない、と長年言われておりました。赤ワインの赤い色は、果皮を抽出したブドウ原液といっしょに醸造させることで、皮に含まれた赤い色を付ける結果、白ワインの透明色に対して、赤ワインは鮮やかな赤い色になる訳ですが、この時、赤い色には独特の渋みが含まれますので、ワインそのものが渋みを増します。
ということは、赤いアイスワインを造ると、独特の渋みが混ざってしまいアイスワイン本来の甘さとアンバランスになってしまうのです。その結果、美味しいアイスワインは白の品種からでないと造られない、と言われておりました。カナダでは、1998年頃から、開発力と技術力に優れたワイナリーが赤いアイスワインの製造にチャレンジする傾向がありました。実際に、2001年12月時点で、私が知る限り、カナダ全体で、8つのワイナリーが赤アイスワインを既に製品化しています。しかし、これを作るためには、ただでさえ神経を使うアイスワイン製造において、更なるリスクを背負うことになります。
春から育ててきたブドウが、暖冬だったらパーになる可能性もありますし、例え出来たとしても、果たして赤ワインの特徴を引き出したアイスワインに仕上がるのか?となると多くの不安を残すこととなります。
事実、赤アイスワインとは言うものの、何ら赤の特徴を引き出せないままになっている製品もあります。また、名前は出せませんが無理矢理赤い色を付けたがる結果、合成着色料を混入しているのではないのか?との悪い噂がある製品もありますし、甘さとアルコールを示すそれぞれの数値から、アイスワインのレベルにまで仕上がっていない製品もあります。上の写真のワイナリーは、2000年産の赤アイスワインを初めて製造しました。果糖度48.4%、アルコール度9.1%という数値は白のアイスワインを凌ぐほどの高いレベルに仕上がりました。色目が若干薄いとはいうものの、赤特有の香りも十分に出ていて、このワイナリーの技術力の高さを改めて痛感しました。


この写真は、アイスワイン収穫まで耐えることが出来ず、力つきてしまったピノブランのブドウの房です。ブドウの実は春から成長を続け、真冬のアイスワイン収穫の時まで、自然状態で畑で辛抱をしているのですが、成長不良になった実は、写真のように枯れてしまいます。ブドウそのものに力強さが無かったり、病害虫の被害、雨や風、冬眠前の小動物の餌食になるなど、様々な形で傷付いたブドウは、あっという間に、このような姿に変わってしまいます。
されることはあり得ません。さて、ここで重要なポイントがあります。このように枯れてしまったブドウの房はどうなるのでしょう?アイスワイン用のブドウとして、いっしょに収穫してしまうのか?
それとも、除去してしまうのか?ワイナリーによって対処方法に違いがあります。ワイナリーの畑は広大ですから、一つ一つを丹念にチェックすることは現実的に不可能だ、としてそのまま収穫してしまいアイスワインにしてしまうワイナリーもあります。こうすることで、収穫の効率化を計り、ある程度の生産数を高めることにはなるのですが、枯れてしまった実が混じることで、アイスワインの出来映えに若干の苦みが感じられる結果となります。
お土産用に作られるアイスワインの多くには、こうした特徴があるのが事実です。一方、St.Hubertusワイナリー社のように、収穫直前まで、作業員が交代で、ブドウの実を厳しくチェックし、枯れたブドウや成長不良の実を除去するワイナリーもあります。当然、収穫効率は劣るため、生産総数には限りがあり、多いところで年間4000本程度しか生産きないという結果になりますが、より高純度なアイスワインを造る姿勢を貫き通すワイナリーは、小規模から中規模のワイナリーに多く、オーナーの熱意と愛情に育まれた素晴らしいアイスワインとして誕生する傾向が見られます。生産数が少ないこうした苦みの無いアイスワインを一般に入手するのは、極めて困難なこととなります。


この写真は、鹿の糞(ウンコ)です。ワイナリーの畑のあちこちに、鹿の足跡と糞がありました。カナダの厳しい冬に向かう中、鹿がエサを求めて麓までおりてきます。
ワイナリーの畑には、甘さを十分に含んだアイスワイン用のブドウがあるのですから、彼等の餌食になるのは必然的な出来事です。鹿だけではありません。鳥や地ネズミなどもアイスワイン用のブドウを狙っています。
ワイナリーは自衛策として、ブドウにネットをかけたり、鹿脅しの空砲を鳴らし続けますが、効果があるとは言いきれません。この日も、私たちがワイナリーの畑の中を歩き回るあちこちで、鳥の群れに襲われるブドウの姿を幾度と無く見かけました。
また、今年は12月に入ってからの暖冬の影響で、雨が多く、ブドウの体力をどんどん奪って行くような気がしてなりません。全ては自然のなせる技だというものの、アイスワインが生まれるまでには、果てしない障害が待ち受けるのです。アイスワインの魅力に取り付かれ、ワイナリーといっしょになって、毎年アイスワイン製造の現場に立ち会っている私も、こうした自然の厳しさを改めて感じ入る季節を毎年迎えています。


いつになるのか、全く分からないアイスワインの収穫を控えて、毎日、ブドウのチェックを行います。アイスワイン用のブドウにはネットがかけられていますが、風に吹かれて、ねじれたり、めくり上がったネットを再度、かけ直します。
同時に、ブドウの実や房をチェックし、成長不良の実や、枯れてしまった房を除去していきます。私も12月は1日おきにワイナリーに出向き、緩やかな斜面を登りながら、ネットをかけ直し、ブドウの実をチェックします。防寒具を来ていても、2時間もすると足下から冷えてきます。あまり無理をして風邪でもひいてしまったら大変ですから、2時間ほどの作業で終了し、ワイナリーのオーナーやスタッフたちと熱いコーヒーを飲む時が、最高に幸せです。
昨年は、収穫が12月11日でしたから、こうしたチェック作業も3回だけだった私も、今年はもう随分と行っています。このまま年明けまで収穫がずれ込んだら・・・と思うと、何とも言えない気持になります。辛いとか、嫌だ、と思うことはありません。
貴重なアイスワインの生産の現場や、最前線に立てる日本人として、これ以上の喜びはありません。


写真・左 私:【わいん@カナダ】滝澤
写真・中 アンディ ジェバード
:St.Hubertus Winery オーナー
ワイナリーに併設されたワインショップにて、考え込む私たちです。こんなに暖かい日が続くようでは、最悪の場合、アイスワインの収穫ができないという異常事態に陥る可能性もあるのです。この日、もう一つの悪いニュースがありました。同じケロウナ市内にある某ワイナリーが、早々とアイスワイン収穫を断念し、アイスワイン用のブドウを一斉に収穫してしまったのです。暖冬が続けば、ブドウは腐ってしまう。莫大な被害金額が生じます。
そうなることを恐れた某ワイナリーは、リスクを避け、現段階で収穫、搾ってしまいました。
こうして出来たワインは、当然アイスワインにはならず甘口デザートワインのレイトハーベストワインになります。週間天気予報も、しばらくは暖かい日が続くといいますし、ケロウナの日中の気温も、マイナス2度からプラス6度という状態です。さてさて、果たしてアイスワインの収穫ができるのだろうか?という不安に眉をひそめながら、私たちの堂々巡りの立ち話が続きます。アイスワインの収穫ができるのか?その確率は、50%50%だということです。

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